自毛植毛の値段はなぜ高いのか?植毛より安い他の方法も紹介
ITコンサルタント、まちづくりコーディネーター、行政職員等を経て独立。沖縄-神奈川の二地域居住をしながら、ライターとして活動しています。子供の頃から「毛髪が太い」「きっと将来ハゲない」と親を始めその他大人から言われてきたため、油断しヘアケアを怠ってきました。その結果、額が後退してきており、若干焦っています。
薄毛治療のひとつである自毛植毛。AGA(男性型脱毛症)の原因である男性ホルモンの影響を受けにくい後頭部の髪を、毛根ごと薄毛部分に移植します。
自毛植毛の魅力は、自分の髪を使うため自然な仕上がりとなることです。また一度移植すると毛髪が生え続け、移植前の男性ホルモンの影響を受けにくい性質はそのままなので、薄毛治療を継続しなくてもよくなる方もいます。
ただし、自毛植毛はその価格が高いことでも知られています。ですがその値段には理由があるのです。この記事では自毛植毛の値段の相場や値段が高い理由、植毛以外に取り得る比較的リーズナブルな薄毛対策方法について解説します。
- 高梨医院
- 皮膚科・美容皮膚科
- 副院長 吉岡 容子
- 東京医科大学医学部医学科を卒業後、麻酔科学講座入局
- 明治通りクリニック皮膚科・美容皮膚 院長を務めたのち、
2014年「高梨医院 皮膚科・美容皮膚科」を開設。2019年より副院長。
【資格】
麻酔科標榜医、麻酔科認定医、高濃度ビタミンC点滴療法認定医、日本レーザー医学会会員、
日本美容皮膚科学会会員、日本抗加齢医学会会員、点滴療法研究会マスターズクラブ会員
髪を自毛植毛する値段の相場とは
自毛植毛の値段の計算方法は、次のように表されます。
この「基本治療費」「1株あたりの料金」「自毛植毛の株数」が分かれば、自毛植毛の料金相場が見えてきます。
基本治療費の平均は159,444円
基本治療費とは、診察料金や術後に服用する薬などの費用のことです。
主要な9クリニックの基本治療費を比較すると、基本治療費は20~30万円程度、平均は159,444円でした。基本治療費がかからないクリニックもあります。
【図表】クリニックごとの基本治療費(単位:円)
基本治療費 | |
Aクリニック | 300,000 |
Bクリニック | 200,000 |
Cクリニック | 0 |
Dクリニック | 185,000 |
Eクリニック | 0 |
Fクリニック | 350,000 |
Gクリニック | 0 |
Hクリニック | 200,000 |
Iクリニック | 200,000 |
平均 | 159,444 |
※表は横スクロール可能です
1株あたりの料金の平均は450円~1,500円
髪を自毛植毛する場合の料金は、1株(1グラフト)あたりの金額で表されます。この「1株」は髪の毛の本数ではなく、移植する「毛包」の本数を指しています。毛根を包んでいる1つの毛包からは1~3本(平均2本)の毛髪が生えてきます。
1株あたりの施術費は、施術法によっても異なります(施術法の詳細は「自毛植毛の施術法次第で単価が変わるため」の項をご覧ください)。主なクリニックにおける平均価格は次のようになっています。施術法にもよりますが、概ね一株あたり450円~1,500円というところでしょう。
【図表】自毛植毛の1株あたりの平均価格
FUT法 | FUE法 | |||
刈る | 刈らない | ARTAS法 | ||
平均価格 (単位:円/株) | 761 | 867 | 1,467 | 472 |
サンプルとしたクリニック数 | 3 | 8 | 5 | 2 |
※表は横スクロール可能です
一度の植毛で植えられる株数上限は2,500株程度
自毛植毛では頭皮の一部を切り取ったり、パンチと呼ばれる微細な筒状の刃物で1株ずつくり抜いたりして採取した毛包を植え付けます。どの程度の株数を植え付けるかは個人の希望次第となりますが、施術の基本治療費は株数によって変わらないため、一度にたくさんの自毛植毛を行う方がコストパフォーマンスに優れた施術が受けられます。
では、一度に最大どの程度の株数を自毛植毛できるのでしょうか。
医療法人横美会のホームページによると、一度の植毛でカバーできる範囲は最大で60㎠(2,500株)程度であるようです。これは概ね手のひらの半分程度の面積となります。
この株数は毛髪の生える密度によって異なりますが、一度に自毛植毛できる株数の上限は2,500株程度であると考えて良いでしょう。
自毛植毛にかかる費用イメージは
以上の数字を自毛植毛に必要な「基本治療費+1株あたりの料金×株数」の計算式に当てはめてみると、次の表のようになります。
【図表】自毛植毛の費用イメージ
FUT法 | FUE法 | |||
刈る | 刈らない | ARTAS法 | ||
500株植える場合(単位:円) | 539,861 | 593,109 | 893,081 | 395,581 |
2500株植える場合(単位:円) | 2,061,528 | 2,327,768 | 3,827,626 | 1,340,126 |
サンプルとしたクリニック数 | 3 | 8 | 5 | 2 |
※表は横スクロール可能です
施術方法にもよりますが、自毛植毛は概ね数十万から数百万の施術費用が必要です。
自毛植毛の値段が高い4つの理由
自毛植毛はどうしてこのように高額なのでしょうか。そこには4つの理由があります。
理由①医療行為となるため:医師の手が必要。その分コストがかかる
まず一つ目の理由として、植毛には必ず医師の手が必要ということが挙げられます。
植毛は増毛などと違い、医療行為です。免許を持った医師しか施術ができません。これは「絶対的医行為」と呼ばれますが、専門的な知識と技術が必要であることを意味しており、誰にでもできる施術ではないのです。そのためにコストがかかります。
理由②健康保険の適用外であるため
二つ目の理由として、植毛手術は健康保険が使えず全額自己負担となることが挙げられます。
植毛手術は医療行為ではあるのですが、病気や怪我の治療が目的ではなく、美容整形などと同じ「見た目」の改善が主目的であるからです。このため、植毛手術は原則として全額自己負担となっています。
理由③一本一本の植毛に手間がかかるため
三つ目の理由は、植毛手術には大変な手間がかかっているためです。
手術では本人の後頭部などから健康な毛包をひとつひとつ取り出し、それを脱毛部にひとつずつ植え付けていきますが、これらはすべて手作業で行われます(一部でロボットを導入しているクリニックもあります)。
組織を傷つけないように毛包を採取し、さらに毛髪の生える方向や角度などを調整しながら、ひとつずつ毛包を植え付けるには熟練の技が必要です。
そして、1㎠あたり40本以上ともいわれる株数を数百~数千の単位で移植していきます。植毛手術はその日のうちに終わりますが、植毛する株数や範囲に応じ、短いもので3時間、長くなると7時間ほど時間がかかります。
理由④自毛植毛の施術法次第で単価が変わるため
四つ目の理由として、自毛植毛の施術法によってはさらに高額となる、ということが挙げられます。
自毛植毛の施術法は大きくFUT法、FUE法に分類されます。FUT法はメスで頭皮の一部を切り取りとり、そこから移植する毛包を一株ずつ切り出していきますが、FUE法ではパンチと呼ばれる特殊な機材を用いて毛包を一株ずつ頭皮からくり抜きます。このため、FUE法を用いるにはFUT法よりも大きな設備投資やメンテナンス費用が必要となるのです。
また、FUT法もFUE法も、移植元となるドナー毛包の採取のために後頭部を刈り上げなければなりませんが、これを嫌がる方のために「刈り上げないFUE法」を導入しているところもあります。これは、パンチで株を採取する際に毛髪を1本ずつ短くカットしながら行うため、大変な手間と時間がかかります。そのため、一株あたりの単価が刈り上げるFUE法の場合の2倍近くするところも多くあります。
自毛植毛以外の手段を考えればもっと安くなる
これまで見てきたように、自毛植毛は場合によっては百万円単位のお金がかかることもあります。
しかも場合によっては、再度の植毛が必要になる場合もあります。一般的に自毛植毛はAGAに強い後頭部と側頭部の毛を植え付けます。そのため自毛植毛をした箇所は、比較的AGAの影響を受けづらいと考えられています。ですがAGA自体の進行が止まるわけではありません。時が経つと、また髪が薄くなってしまう可能性があるのです。
最終的にどのような薄毛対策を行うかは個人の判断によりますが、自毛植毛以外のより安い選択肢についても考慮しておくと良いでしょう。
自毛植毛以外の手段と相場、メリット・デメリットを比較
それでは、自毛植毛以外の薄毛の対策手段にはどのようなものがあるのでしょうか。表にまとめてみました。
【図表】自毛植毛以外の薄毛の対策手段
薄毛の対策手段 | メリット | デメリット | 相場 |
ウィッグ
(かつら) |
・薄毛部分が広くてもカバーできる
・自分が理想とするスタイルが実現できる ・早く実現できる |
・まれに蒸れたりかぶれたりする
・脱げることも(着脱式) |
5万円~50万円
(※1) |
増毛
(結毛法) |
・見た目が自然 | ・増やせる量と範囲に限界がある | 5万円~50万円
(※2) |
ヘアカット
(薄毛専門美容室) |
・自分の髪だけでカバーできる
・他の方法と比べて費用が安い |
・少ない地毛でのカバーなのでカバーできる範囲に限界がある
・ヘアスタイルの選択肢が限られる |
数千円~1万円前後 |
※表は横スクロール可能です
※1:月額制の場合もあります。
※2:本数によって上限額が異なります。
ところで、AGAの進行度合いの指標に「ハミルトン・ノーウッド分類」というものがあります。薄毛の状況をⅠ型からⅦ型まで分類したもので、数字が大きくなるほど薄毛が進行していることを意味します。
【図表】ハミルトン・ノーウッド分類
最終的にどの対策を選ぶかは個人の判断によりますが、AGAの進行度合いによってどの対策が向いているかは異なります。
AGAの進行が初期~中期(Ⅰ型~Ⅲ型程度)の場合、増毛(結毛法)が向いているでしょう。薄毛レベルがⅢよりも進んでいる場合には、ウィッグを利用した方がコストパフォーマンス的には良いといえます。
それでは、植毛以外の薄毛対策をひとつずつ見てみましょう。
ウィッグ(かつら)
「ウィッグ」というと簡単につけたり外したりする「かつら」を連想しますが、近年は実に多様なウィッグが存在しています。
- 着脱式:
自分で着け外しするタイプで、最も一般的です。金具を操作して着脱します。 - 貼り付け式:
ウィッグの裏全面が接着面となっていて、ばんそうこうのように貼り付けて固定させます。 - 編み込み式:
地毛に土台を作り、そこにウィッグを編み込んで固定させる方式です。
ウィッグのメリットは、薄毛部分が広い場合や毛が全くない場合でもカバーできるという点にあります。
薄毛部分が広いと、たいていは毛根もかなり失われているので、薬による改善は期待できません。また、そもそも毛がなければ地毛に毛材を結ぶという増毛(結毛)もできません。
それゆえ、AGAがかなり進んでいる場合、植毛以外でとれる対策はウィッグ一択といっても過言ではありません。
※スヴェンソンの編み込み式増毛によるビフォーアフター
株式会社スヴェンソンの特許技術「編み込み式増毛」もウィッグの一種です。
薄毛専門美容室スヴェンソンは、髪型を変えるように髪を増やすことが自然な選択肢になってほしいと考えています。「増髪(ぞうはつ)」というコンセプトのもと、髪を増やすことは男磨きのひとつとして、様々なサービスを提供しています。
特殊な糸を使ってウィッグを頭にしっかり固定させるので、不意にズレたり外れたりする心配は無用。日々のシャンプーから激しいスポーツに取り組むときまで、まるで自分の毛のような感覚で生活することができます。
編み込み式増髪で、あなたが理想とするヘアスタイルを実現してみてはいかがでしょうか?
増髪(結毛法)
増髪(結毛法)とは、自分の髪の毛の根元に人工毛や人毛などの毛材を結びつけて、髪の毛のボリュームを増やす方法です。
もともと生えている自分の髪の毛を利用しているので、毛の流れや長さなども地毛に合わせられ、見た目がとても自然な仕上がりになるというメリットがあります。
また、ウィッグに比べてムレやかぶれのリスクが少ないのも利点です。
ただし、増やせる量と範囲は残っている地毛によって限界があります。増髪(結毛法)は、つむじや分け目などを部分的にカバーしたい方向けの対策といえるでしょう。
※スヴェンソンの部分増髪サービス「マイヘアプラス」によるビフォーアフター
株式会社スヴェンソンの部分増髪サービス「マイヘアプラス」なら、特許技術を採用して99.2%の定着率を実現。結びつけた毛が取れてしまう心配はほとんどありません。
「マイヘアプラス」についてもっと詳しく知りたい方は、下記のページもご覧ください。
ヘアカット(薄毛専門の美容室)
部分増髪(結毛法)やウィッグが必要なほどではないな……という方には、薄毛専門の美容室によるヘアカットでカバーする方法もあります。
薄毛専門美容室のメリットは次の2つです。
- 自分の髪の毛だけでカバーができる
- 他の手段と比べて費用がかからない
他の手段の費用相場が数万円以上からになるのに対し、ヘアカットの場合は数千円から1万円前後で済みます。
また、自分の髪の毛を活かしながら、髪質や毛量などを考慮して薄毛が目立たない様々な髪型を提案してくれるのもポイントです。
※薄毛専門美容室スヴェンソンでヘアカットをした男性のビフォーアフター
近年は、都市圏を中心に薄毛に悩む男性専門の美容室がいくつか存在しています。
薄毛専門美容室スヴェンソンなら、プライバシーに配慮された空間で、プロの美容師によるヘアカット・スタイリングを受けることができます。通常の美容室で薄毛の相談をするのが恥ずかしいという方にとっても、人目を気にせずに相談することができますよ。
頭皮ケアや育毛などのメニューも充実しており、髪の毛の気になる悩みの相談にものってくれます。
薄毛専門美容室について詳しくは、以下のページもご覧ください。
具体的にどのようなヘアスタイルが実現できるのかについては、「薄毛で悩む人は薄毛専門美容室へ行こう!自然でオシャレな髪形を紹介」の記事をチェックしてみてください。
「自毛植毛の値段が高い」と思ったら、他の手段も検討しよう
今回は自毛植毛の相場や他の薄毛対策について解説しました。
自毛植毛は、場合によっては百万円単位でお金がかかります。高価な理由は、専門の医師による高度な技術が必要なこと、手間がかかること、高価な設備が必要なこと、保険のきかない自由診療であることなどです。
薄毛の対策は、自毛植毛がすべてではありません。ウィッグや増髪(結毛)など、他にも選択肢がいろいろあります。薄毛の進行度合いによってとれる選択肢は変わってきますが、自分の生活スタイルや目的に応じて、様々な手段を検討してみてください。
参考文献
親和クリニック「「自毛植毛」手術の費用に保険適用はできる?」
服部恒明、大槻文夫「成人の手部平面積の非対称性について」
AGAスキンクリニック「自毛植毛の費用相場は?人工植毛との違いは?」
ヨコ美クリニック「よくある質問(最大何本まで植えられますか?)」
公開日:2020/12/08