自毛植毛の失敗を避けるには? 手術以外に有効な方法も紹介
ITコンサルタント、まちづくりコーディネーター、行政職員等を経て独立。沖縄-神奈川の二地域居住をしながら、ライターとして活動しています。子供の頃から「毛髪が太い」「きっと将来ハゲない」と親を始めその他大人から言われてきたため、油断しヘアケアを怠ってきました。その結果、額が後退してきており、若干焦っています。
薄毛治療に有効な方法として期待できる自毛植毛。しかし、その手術費用は一般にかなり高額で、髪が生えそろうのにもある程度時間がかかります。高い費用と時間をかける自毛植毛ですから、失敗はしたくないですよね。
ところが、残念なことに「植毛に失敗した」と感じてしまうことも少なくありません。この記事では、自毛植毛でよくある5つの失敗例と、その失敗を避けるための対策を解説します。
- 高梨医院
- 皮膚科・美容皮膚科
- 副院長 吉岡 容子
- 東京医科大学医学部医学科を卒業後、麻酔科学講座入局
- 明治通りクリニック皮膚科・美容皮膚 院長を務めたのち、
2014年「高梨医院 皮膚科・美容皮膚科」を開設。2019年より副院長。
【資格】
麻酔科標榜医、麻酔科認定医、高濃度ビタミンC点滴療法認定医、日本レーザー医学会会員、
日本美容皮膚科学会会員、日本抗加齢医学会会員、点滴療法研究会マスターズクラブ会員
自毛植毛の主な失敗例5つ
自毛植毛において主に起こる失敗例は次の5点です。
①毛根が生着しない
②仕上がりが不自然になってしまう
③傷跡が目立つ
④副作用に苦しむ
⑤AGAが進行し植毛が無駄になる
一つずつ解説していきます。
①毛根が生着しない
自毛植毛は、自分の健康な髪の毛を毛根ごと採取し、薄毛が気になる部分に一株ずつ植え付けていきます。
しかし、その毛根の生着率は一般的に80~90%程度であると言われており、移植したすべての毛根が生着するわけではありません。
もともとの髪質や施術者の技量によっては、採取した毛根の細胞がダメージを受けてしまい、生着率が悪くなってしまうこともあります。
生着率には移植後の頭皮のケアも重要です。移植後の毛根部分はとても敏感な状態にあるので、適切なケアを行わないと生着率が下がってしまいます。
②仕上がりが不自然になってしまう
医師の技量によって差が出やすいのが「仕上がり」です。
植毛では単に髪の毛を増やすだけではなく、周囲の髪とのバランスや密度、生え際の形などをできるだけ自然に仕上げるのが重要となります。
特に、おでこの生え際は目に留まりやすいです。生え際が直線的すぎたり、ソリが不自然な形だったりすると、違和感を持たれてしまうことも……。
生え際の形は個人の好みにもよりますので、直線的であれば失敗というわけではありませんが、想像より不自然な仕上がりになってしまい後悔する可能性もあります。
③傷跡が目立つ
自毛植毛で移植に用いる髪の毛は本人から採取しますが、その施術方法によっては傷跡が目立つようになる場合もあります。
自毛植毛の施術方法には「FUE法」と「FUT法」がありますが、FUE法の場合は極細の穴あけパンチのような器具で毛根をくり抜いて採取します。
極細とはいっても細胞を傷つけないだけの大きさ(1mm前後)は必要なので、採取部位には何らかのくり抜き痕が残ります。この痕がくり抜いた数だけ残ることになるのです。
広範囲から少しずつくり抜きますし、周囲の頭髪に隠れますので、通常はくり抜き痕が目立つことはありません。しかし、くり抜いた数があまり多い場合や、短髪にした場合には傷跡が見えてしまうことがあります。
また、FUT法では、移植毛を頭皮ごと帯状に切り取って採取します。そのため、頭皮を採取した後頭部や側頭部には、採取部を縫合した1本の傷跡が生涯残ってしまいます。
この傷跡は、通常1年ほどで1~3mm程度の太さの白い線状になります。しかし、傷の治り方には個人差があり、体質によっては傷跡が肥厚して太くなったり、赤く盛り上がってケロイド状になったりすることも考えられます(その場合は治療が必要です)。
FUT法による傷跡は、一般的に髪の長さが2cm以上あれば隠れて見えませんが、やはり五分刈りや坊主頭などの短髪にすると目立ってしまいます。
④副作用に苦しむ
いずれも一定期間で治りますが、自毛植毛の手術の副作用に苦しむ方もいます。
手術の副作用として、術後しばらくして移植部にかゆみを感じたり、額やまぶたが腫れたりすることがあります(1週間程度で治ります)。また、まれに手術部位に感染症が発生することがあります。
そのほか、手術後数ヶ月~半年ごろまでは、手術部位に毛のう炎(ニキビ状の赤い吹き出物)が現れることがあります。
さらに、FUT法の場合は、後頭部の移植毛採取部位の縫合部にしびれ感などの違和感が数か月残ることがあります。
⑤AGAが進行し植毛が無駄になる
植毛した髪の毛はAGA(男性型脱毛症)の影響は受けづらいと考えられています。AGAを進行させる男性ホルモン「ジヒドロテストステロン」の影響を受けにくい後頭部と側頭部の髪の毛を植毛するためです。
しかし、薄毛の原因がAGAの場合、頭髪全体でその進行を止められるわけではありません。
AGAの進行度合いによっては、せっかく植毛しても、元あった髪の毛がAGAによって抜けてしまいスカスカになったり、植毛部分だけが残ってバランスが悪くなったりしてしまうことも考えられます。
自毛植毛の失敗を防ぐには?
ここまで、自毛植毛で考えられる主な失敗例をご紹介してきました。
このような自毛植毛の失敗リスクを少しでも下げるためには、次の3点に注意してください。
①手術前にクリニックをしっかり確認する
②「安さ」よりも「仕上がり」で施術方法を選ぶ
③自毛植毛をしない方が良い場合も
一つずつご説明します。
手術前にクリニックをしっかり確認する
自毛植毛の失敗を防ぐには、どのクリニックが良いか事前にホームページなどでしっかり確認することが重要です。
判断の目安として次のような点があげられます。
- 施術までのプロセスがわかりやすく提示しているか(カウンセリング、見積もり、予約など)
- 仕上がりイメージの写真が豊富か
- 担当医の経歴はどうか(勤務経験が長いか、手術件数は多いか)
上記のような点を気に留めながら、いくつかのクリニックでカウンセリングを受けて、納得いくクリニックを選びましょう。
その際には移植毛がどのくらい生着するか、施術のイメージなどをきちんと提示してくれるところかどうかもポイントです。
値段や生着率だけで単純に決めるのではなく、施術イメージを重視しましょう。写真を撮影して植毛シミュレーションをしてくれるところもあります。また、万一植毛に向いていなかった場合には他の方法を提示してくれるでしょう。
「安さ」よりも「仕上がり」で施術方法を選ぶ
自毛植毛で「安さ」だけを重視すると、「仕上がり」に納得がいかない場合もあります。
仕上がりで一番目立つのはおでこの生え際です。植毛の計画段階で、生え際の緩やかなM字カーブやその自然なギザギザをデザインに盛り込んでもらえるクリニックだと安心です。
カウンセリングの時に、「生え際は自然な形にしたい」と具体的に相談してみましょう。
自毛植毛をしない方が良い場合も
前述の通り、AGA(男性型脱毛症)の進行に伴い、植毛した箇所以外の髪が抜け、最終的に違和感がある髪型になってしまうこともあります。
多くのクリニックでは、そうならないようカウンセリング時にチェックしてくれます。
また、髪質や生え方によって植毛が向いていないと判断された場合は、植毛以外のほかの方法も紹介してくれるはずです。
そのような場合は自毛植毛にこだわらず、ほかの方法についても検討することをおすすめします。
自毛植毛の他にもある「薄毛対策」の方法
それでは、自毛植毛のほかにどのような方法があるのでしょうか。
自毛植毛以外に薄毛をカバーする方法としては「増毛(結毛)」と「ウィッグの利用」があります。
薄毛専門美容室スヴェンソンは、髪型を変えるように髪を増やすことが自然な選択肢になってほしいと考えています。「増髪(ぞうはつ)」というコンセプトのもと、髪を増やすことは男磨きのひとつとして、様々なサービスを提供しています。
増髪(結毛)
増髪(結毛)とは、自分の髪の毛の根元に人毛や人工毛を結びつけることで髪のボリュームを増やす方法です。
もともと生えている髪の毛を活かし、髪の生えている向きや長さなどを調整していくので、仕上がりがとても自然になります。
また、スタイリング剤によるヘアアレンジやパーマなども可能で、様々なヘアスタイルを楽しむことができます。
残っている自毛を利用するので、自毛の量や密度によっては実施が難しいこともありますが、つむじや分け目など部分的に薄くなっている部分のカバーには最適です。
ウィッグの利用
ウィッグとは、わかりやすくいうと「カツラ」です。一般的にイメージしやすい頭に被る方式の「フルウィッグ」のほかにも自毛を活かしたウィッグなど、近年は様々なバリエーションのウィッグがあります。
ウィッグの大きな魅力は、ヘアスタイルのバリエーションが豊富という点にあります。植毛はどうしても移植できる毛量などに制限がありますが、ウィッグだとその制限がありません。自毛植毛よりも、自分の好みにあったヘアスタイルを実現しやすいでしょう。
材質も人毛・人工毛・ミックス毛があり、予算と好みに応じて選ぶことができます。安い価格で利用できる既製品以外にも、自分の好みのスタイルを実現できるオーダーメイドタイプのウィッグもあります。
装着した後で自毛と合わせてカットしたりヘアセットしたりでき、自毛となじんでとても自然な仕上がりとなります。部分的なものからかなり広い範囲のものまで装着できるので、薄毛がかなり進行している方でもつけることができます。
植毛のように髪の毛が伸びるのを長期間待たなくても良いという点も利点といえるでしょう。
ストレスフリーなのは「編み込み式」
ウィッグを利用する上で心配なのは、意図せずウィッグが外れてしまうケースではないでしょうか。
ウィッグ(カツラ)の装着方法には、金具による着脱・編み込み・貼り付けなどいくつかの方法がありますが、外れてしまわないか心配な方には、編み込み式や貼り付け式のウィッグがおすすめです。
特に、株式会社スヴェンソンが提供している編み込み式のウィッグは、自毛とウィッグを編み込んで24時間外さずに過ごすことができ、スポーツなど激しい運動をしても不意に外れる心配がありません。
月に一度のメンテナンス以外は装着したまま生活し、入浴や水泳なども可能です。つけたまま地肌までシャンプーできる素材のものもあり、装着し続けてもほとんど不便を感じることがありません。
ストレスフリーな編み込み式ウィッグを、お近くのスタジオで無料体験してみてはいかがでしょうか。
自毛植毛は手段のひとつ。有効な手段を選ぼう
自毛植毛は自分の毛髪を移植するため、その後の高い生着率が期待できる魅力的な手段です。
しかし、これまでにご紹介してきたように、場合によってはその生着率が低くなってしまったり、仕上がりが不自然になったり、手術による傷跡が目立つといった失敗が起こることもあります。
また、AGAの進行によっては植毛が無駄になってしまうなど、そもそも植毛が選択肢として適切ではない場合もあります。
気になる薄毛への対策は、ウィッグや増髪(結毛)など多様な手段があります。ご自身の生活様式や目指したいヘアスタイルを視野に入れ、多角的に考えてみることをおすすめします。
参考文献
日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
板見智「男性型脱毛の発症メカニズムと治療選択」
紀尾井町クリニック「傷跡への植毛 – 20歳 190株」
親和クリニック「自毛植毛の失敗パターンとは?押さえておくべきポイントと予防策」
厳選AGA「植毛が気になる!植毛の生え際は不自然って本当?」
アイランドタワークリニック大阪院「植毛施術前のカウンセリングの内容と流れについて」
クラウンクリニック銀座院「植毛後生え際が不自然にならないための大切な7つのポイント」
公開日:2020/11/06