薄毛になる人に共通すること/メカニズム解析
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健康的な髪の毛は数年かけて成長し、生え変わるサイクルを繰り返しています。髪の毛の成長期が短くなると十分な育毛ができず、薄毛になっていくようです。髪の毛の成長が不十分になる原因には何があるのでしょうか。今回は、薄毛のメカニズムの解析や、薄毛になる方の共通点についてご紹介します。
髪の毛が生える仕組みは?
髪の毛は頭皮の内部にある毛根、頭皮から外へ飛び出している毛幹の二部分に分けられます。髪の毛は毛根の先端にある毛母細胞が分裂することで長く太くなっていきます。
毛母細胞の活発な分裂をうながすには、栄養や酸素などの供給が欠かせません。毛母細胞の分裂に使われるエネルギーは、毛細血管で運ばれてきます。頭皮の血行が悪くなるとエネルギーの供給がうまくいかなくなり、髪の毛の成長が妨げられてしまうことがあります。育毛において地肌の血行促進が重視されるのはこのためです。
健康的なヘアサイクルとは
髪の毛が生えはじめてから抜けるまでの期間は「ヘアサイクル」と呼ばれ、個人差はあるものの周期は数年にわたります。男性なら3年から5年、女性なら4年から6年のヘアサイクルになることが多いようです。
ヘアサイクルは大きく分けて「成長期」「退行期」「休止期」の三つの時期があります。成長期がもっとも長く、健康な状態なら2年以上続くのが基本です。
毛根にて毛母細胞が分裂を行い、髪の毛を成長させていく時期となります。成長期が長いほど髪の毛は太くなり、長さも増していきます。
成長期の中でも、「前期(早期)」「中期」「後期」の三つの期間があります。前期(早期)は髪の毛ができはじめたばかりの時期です。頭皮から出てきていないか、うぶ毛のような状態にあるものが多くみられます。中期の髪の毛は、まだ細いものの、毛根はある程度成長しています。髪の毛として完成するのは後期です。
退行期では、毛母細胞が役目を終え、髪の毛の成長が止まります。成長し終えた髪の毛は2週間ほどかけて毛母細胞から離れ、抜ける準備を整えていきます。この時期の髪の毛は抜けやすくなり、くしけずると簡単に引っこ抜けてしまうのが特徴です。
休止期になると髪の毛の毛根が小さくなり、自然と頭皮から抜けていきます。休止期は人によって異なりますが、3カ月ほどを目安に続くようです。毛根は新しい髪の毛の成長準備をはじめ、次のサイクルへ移行していきます。
薄毛のメカニズムとは?
健康的なヘアサイクルを持つ人であれば、1日に0.3mmから0.5mmずつ髪の毛がのびていくとされています。ヘアサイクルにおける成長期が長いほど髪の毛は長く、太く成長していきます。反対に、成長期が短いと髪の毛の成長は不十分なままです。薄毛の状態にある方は、髪の毛の成長期が短くなっている可能性があります。成長期の短い毛髪は細く短いものばかりとなり、地肌がかなり目立つようになります。髪の毛の成長期の短縮は、どういったメカニズムによって起こるのでしょうか。
男性が悩まされる薄毛の多くは「AGA(男性型脱毛症)」です。AGAの原因はいくつかありますが、たいていは男性ホルモンのはたらきによって起こります。
髪の毛をつくりだす毛母細胞は、毛乳頭細胞の出す信号にしたがって分裂します。毛乳頭細胞が分裂を抑制するような信号を出せば毛髪の成長はストップし、ヘアサイクルは退行期に移ります。薄毛の方の頭皮では、毛乳頭細胞が毛髪の成長を制御する信号を出しているため、成長期が短くなるようです。
毛髪の成長抑制にかかわる信号には、男性ホルモンの「テストステロン」がかかわっています。毛乳頭細胞に男性ホルモンのテストステロンが運ばれることにより、「TGF-β」というたんぱく質が生成されます。TGF-βのはたらきで髪の毛が抜けるように指令が出ると、髪の成長が不十分であっても毛母細胞は分裂をストップ。髪の毛は抜けていきます。
人間が一生のうちに繰り返せるヘアサイクルの数には限界があります。毛母細胞にも寿命があり、分裂できる回数に限りがあるためです。そのため、成長期が短くなった状態を放置していると、毛母細胞がはやめに寿命を迎えてしまいます。死滅した毛母細胞をよみがえらせるのは困難なため、薄毛に気づいたらはやめに対策するのが大切です。
薄毛になる人には、こんな共通点があった!
現在髪の毛にトラブルを抱えていない方が将来薄毛になるかどうか、はっきりと判断する方法はまだありません。ただ、薄毛になった方々は以下の条件のどれかに当てはまることが多いようです。特に3個以上当てはまる人は注意が必要です。
● 家族に薄毛の方がいる
ホルモンの影響による薄毛が起こりやすいかどうかは、遺伝する可能性があるといわれています。両親や祖父母など、身近な家族に薄毛がいる方は気をつけたほうが良いかもしれません。ただ、薄毛になりやすい遺伝子を持っていたとしても、必ず薄毛になるわけではありません。もちろん、遺伝に関係なく薄毛になる方もいます。
● 皮脂の分泌が多い
頭皮に分泌される皮脂が過剰だと、粃糠性脱毛の原因となる「脂漏性皮膚炎」にかかることがあります。脂漏性皮膚炎によりできた大量のフケが毛根に入り、髪の毛の成長が妨げられてしまうのが原因です。また、単純に皮脂の分泌は男性ホルモンが多いせいもあるかもしれません。男性ホルモンにより薄毛になりやすい方が、同時に脂性である可能性もあります。
● 頭皮がかたく、血行が悪い
頭皮の状態は、健康な髪の育成に影響することがあります。特に、頭皮の血行が悪いと、毛細血管が十分な栄養や酸素を運べなくなります。毛母細胞が分裂するエネルギーがなくなり、薄毛の要因のひとつとなってしまうかもしれません。頭皮の血行不良は同じ姿勢を取り続けることや運動不足などによって起こります。毎日長時間デスクワークをしている方や運動習慣のない方は、いつの間にか頭皮がかたくなっているかもしれません。
● 喫煙習慣がある
タバコはさまざまな健康被害を引き起こすとされています。そのひとつが、ニコチンによる血行不良です。ニコチンが毛細血管を収縮させることで毛母細胞へエネルギーが行きわたらず、髪の成長が阻害されてしまう可能性があります。
● 栄養が足りていない
髪の成長には適切な栄養摂取が欠かせません。髪の毛をつくるたんぱく質やケラチン、ヨウ素、ビタミンなどが足りていなければ、髪の毛も元気がなくなってしまいます。
● ストレスを抱えている
人間関係の悩みや環境の変化など、さまざまな場面で蓄積していくストレス。人間の体はストレスを感じ続けると緊張し、血行が悪くなります。また、緊張状態は睡眠にも影響を及ぼします。睡眠不足の状態では成長ホルモンの分泌が滞るため、髪の毛の成長に影響が出てしまうかもしれません。
また、ストレスがたまると男性ホルモンの分泌が増えることがあります。男性ホルモンの影響でヘアサイクルの成長期が短くなり、薄毛になってしまう可能性があります。
まとめ
髪の毛が薄くなるメカニズムには、ヘアサイクルが関係している場合があります。抜け毛の量が増えた、髪の毛が細くなってきたなどの兆候があれば、薄毛の進行を疑いましょう。
薄毛になる方にはいくつかの共通点があります。もちろん、すべての方に当てはまるわけではありませんが、ご紹介した内容に心当たりのある方は、薄毛予防・改善に取り組んでみても良いでしょう。髪の毛のために良いことは健康のためにも良いことです。禁煙や食生活の改善、ストレス解消など、できることからはじめてみてください。
参考URL
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf
https://lab.chapup.jp/cat2/basic/cause-remedy-131
https://www.aderans.co.jp/kamiwaza/usuge_kiso_chishiki/causes_of_aga/
https://hagemag.com/feature-of-human-balding#i-4
公開日:2019/06/20